この度、久しぶりに単行本を出版しました。タイトルは「日本の壊れる音がする-今なら、まだ間に合う!-」という本で、朝日新聞出版が発行してくれました。6月4日に出版、そして6月9日に八重洲ブックセンターで出版記念キャンペーンを行いましたところ、大変観衆を呼び、2,000冊以上が売れてトップセールスになったようです。

なぜこのような本を書いたのかと申しますと、昨年の8月末に総選挙があり、自民党が退廃し、民主党が躍進した結果、民主党政権が生まれました。それは多くの選挙民が民主党に投票した結果ですが、選挙民は長い間政権についていた自民党にすっかり失望して民主党に大きな期待を託した結果だと思います。
民主党は野党時代を通じて脱官僚と政治主導を唱えていました。実際、自民党政権時代に自民党は"自分党"と言われるように、全国各地の議員が自分の選挙区を子供に継がせるという慣行が広まったために新しい人材が自民党からは立候補しにくくなっており、一方の民主党は、若くて優秀な人材が多く入っていたということも選挙民にはひとつの期待を抱かせたかもしれません。
しかし、その民主党は発足してほどなく国民に大きな失望と疑問と不安を持たせることになりました。まず、三党合意の暴走です。多くの国民は民主党に投票しましたが、国民新党や社民党に投票したわけではないのに、これらの小党が民主党政権の政策を勝手に大きく制約することになり、国民は違和感を覚えました。次に政治と金の問題です。総理大臣が多額のお金を母親から受け取って報告もしていなかったのです。小沢幹事長が多額の資金疑惑に包まれている中でその問題が解明されずにいることです。また、鳩山総理がぎりぎりの沖縄県民の理解を得て、普天間基地を辺野古に移すという日米合意が成り立っていたのを空想的理想主義で「国外」や「県外」と叫んで沖縄県民の気持ちを翻弄し失望させたことです。また、この政権は準備不足あるいは慣れていないということもあったかもしれませんが、経済計画なしで10ヶ月も経過してしまったという異様な在り方、しかも子ども手当をはじめとして多額のお金を国民に寄付する約束をしたために、財政赤字が累増して危険水域に入ってきていることなど様々な問題が露出してきました。
そしてマニフェストで約束した国民への給付は、実は多くの自己矛盾に満ちていました。派遣労働者がかわいそうだと派遣を禁止にする法案が出されましたが、これは立場の弱い労働者を更に窮地に追い込むという逆効果があります。子ども手当は15歳以下の子どもがいる900万家庭に配られますが、15歳以下の子どもがいない3,900万家庭には給付されないので、消費刺激策と考えるならばこんなに不公平な政策はありません。子育てというのであれば、サービスの充実の方がはるかに重要です。公立高校の無償化を導入しても子供たちの志望傾向はほとんど変わりませんでした。それは10万や12万で人生の選択をしていないということです。逆に本当に家庭の経済状況が厳しい学生がおります。この方たちのために数百億円の奨学金をつくることの方が遙かに効果が大きいでしょう。
つまり、マニフェストの政策の思いはわからないでもありませんが、その帰結は狙いと逆になるという自己矛盾に満ちたもので、しかも多額な給付のために国債を増発せねばならず、国の借金は今や膨大になっております。直近のデータでいうと国の借金は970兆円になっており、国債を買える国民の純金融資産は1,060兆円に過ぎず、このような無邪気な給付政策をしていると、日本はそろそろ純債務国に陥る危険があります。日本の規模はギリシャの20倍も大きいので、もし純債務国になって国債の価格が暴落すると日本が壊滅するだけでなく、世界経済にも大変な影響を及ぼすことになります。
そのような欠点と矛盾に満ちた政治政策運営をこのまま放置すると日本が崩壊するという危機感を多くの人々が持ちました。それが鳩山政権に対する支持率の急落に現れました。こうしたいわば国難といえる現象も実は国民の選択の結果なので、次の選挙やその次の選挙に国民が間違った選択をしないようにもっと経済や政治や世界情勢をしっかり学ぼうという意図を込めて私はこの本を書きました。
6月4日に菅直人氏が民主党代表になり首相に指名を受け、ほどなく菅政権が発足しました。菅政権は小沢幹事長との距離を開けるという巧みな演出で国民の支持率は急上昇しています。菅総理大臣は財政政権や成長戦略も力を入れると言っていますので、多いに期待したいところですが、菅総理の唱える第三の道という成長戦略は、国民から税金を取ってそれを家族の支援に回せばそれが支出となり、経済が成長するという考えのようですが、最も重要なことは国民が求めるサービスが提供され、それが雇用になるメカニズムを具体的にどう整備するかということです。国民が望むサービスを提供するのは基本的には民間部門であり、これは別に税金を取らなくてもよいサービスが提供されれば、国民はそれを求めます。従って、税金が"雇用創出"を通じて成長に結びつくという可能性はもちろんありますが、それよりも自由な競争がよいサービスを生み、それが雇用の成長促進に結びつくというメカニズムが本来のメカニズムで、その本来のメカニズムが満たされるならば、別に国民から税金を取る必要はありません。
私どもは経済を強化すると唱って新規事項を打ち出しつつある菅政権に期待をかけながらも、その実態を見つめていい選択をする必要があるでしょう。ご興味のある方はぜひこの本を読んで、どのような選択をするべきか考えていただければと思います。