一般によく用いられているグラフは次の3つである.
長方形の棒の長さで何らかの値を表現するグラフ. 2つ以上の値を比較する際によく使われる. 棒グラフを作成するときは,「グラフ表現の基本要素」(参考文献[1])に注意して作成するとよい.
棒グラフをみるときには,一つ一つの棒の長さを読むのではなく, 「一連の棒を1セットとみなし,どの棒が高く,どの棒が低いか」を読み取る.
また,1セットのデータの中で,「平均並みか,平均より大きいか,あるいは平均より小さいか」 という「統計的な見方」をすることが多い. このようなとき,単に棒グラフだけを示すのではなく,平均値を基準線で示すとよい. あるいは,平均値からの差(平均偏差)を示すグラフを作成するのもよいだろう. (「気温と降水量の偏差の推移」参照)
縦軸,横軸に2項目の量や大きさ等を対応させて,データを点でプロットしたもの. 散布図は2つの変量の関係を調べるのに適したグラフで, 因果関係が想定できる場合には,横軸が原因,縦軸が結果とするのが一般的である.
散布図の一種で,プロットされた点を直線でつないだもの. 線グラフでは,ある順序に対応する系列データを扱う. たとえば,日経平均株価や気温・降水量などの時系列データを表現する際によく用いられている.
Excelで線グラフを作成する場合,系列データの間隔(横軸の幅)は等間隔でなければならない. 等間隔ではない系列データをグラフにする場合,散布図を作成してから線でつなげばよい.
円グラフは,丸い図形を扇形に分割して,何らかの構成比を表したグラフで, 割合や内訳を示すのに適している. 同様に,帯グラフも構成比を表したいときによく用いられている.
データのタイプやその読み方をよく考えなければ,よいグラフを作成することはできない. ここでは,グラフ作成時の注意点について簡単に述べる.
主要自動車産業のデータ(表1)を例に,グラフの表現方法について述べる.
なお,表1は「ある文献」をそのまま引用している. 「ある文献」の著者はうっかりミスをしたのか,単位を示していなかった. 売上高の単位は円なのだろうか.円にしては少なすぎる. では,ドルなのか.この場合,「百万円」と表記するのが妥当であろう. このように,著者は明確でも読者からするとはっきりしないことがある. 表やグラフを作成するときは,必ず単位を示すこと.
5社の従業員数を棒グラフで表すと図1の通りである.
図で表現することの利点は,パッとみただけで情報の概観をつかむことができることにある. もし図が与えられていなければ,すべての値を見比べない限り,どの会社の従業員が一番多いのかわからない. 図をみれば,トヨタ自動車の従業員数が他社よりも多いことが一目瞭然である. しかし,グラフから正確な値を把握することはできない. 図から本田と三菱自動車の従業員数の大小を識別することは難しい. もし両者の違いを主張したいのなら,値を示すか,グラフを作り直す必要がある.
[1] 上田尚一,統計グラフのウラ・オモテ,講談社,2005.